Funny-Creative BLOG

電子書籍作家の幾谷正が個人出版の最前線で戦う話

文字書きとして立命館の研究論文とpixiv小説について思ったこと

こんにちは、幾谷です。
立命館大学が発表した論文」がかなりネット上を騒がせていますね。

news.livedoor.com

SNS上ではなんか、小説なんて一文も書いたことない、著作権もろくに理解してないド素人どもの妄言が1万RTとか拡散されてて「地獄~!!」って感じです。

・商業作家としてデビュー経験があり、現在も個人出版で活動している
・WEBに自分の小説を公開した経験があり、今後も機会があれば再開する予定
・理系大学の出身でデータ解析系の研究で卒業論文を書いた経験があり、アカデミックに対しても理解がある

という僕が、当事者側としてきわめて有用なことをお話するので、耳触りのいいだけの妄言は鼻で笑って、とにかく俺の話を聞け。

 

何が問題なの?

まず著作権的な話をすれば何も問題ありません

1.著作物の一部を論文へ引用するのは、適切にやってれば、無断だろうが問題無い。
2.解析に用いることも「情報解析のための複製など」というド直球な規程があるので、大丈夫。
3.出典元を書かない方がむしろ問題なので、ハンドルネームを書いてるのは正しい。

なのでむしろ問題があるのは、「自分の作品が不特定多数に向けて公開されていて、著作物として扱われる作品だ」という自覚がなかった、作者たちの方だと思います。
pixivの規程にもちゃんと「作品の著作権はお前らのものだぞ」「問題があったらお前らで解決しろよ」と書いてあるのに、「規程なんか知らない。著作権もわからない」ってワガママ抜かしてる連中がアホなだけです。

仮に僕の作品が何らかの研究論文だとか、批評サイトだとか、個人のブログに引用を受けたとして、それが正しく著作権法に基づいて行われたものであれば、問題にはしませんし、文章を削除するなんて過剰反応もしないでしょう。
「著作を著作として扱われれたくない」という人たちは、結局のところ、最初から著作を公表すべきではなかったよね、としか言いようがありません。

特に今回問題になっているpixiv小説の場合、「マイピクに公開」という不特定多数に公開しないための設定も存在するので、作者側はこの設定によって自衛できたはずです。
(今回の件を受けて、この設定に変更する形で落ち着けた方もいると耳にしています)

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見られたくないなら見られないようにすればいいでしょ。
好きで見られないようにしてるならそれでいいでしょ。

「作品を不特定多数に公表する覚悟のない人間を著作者として扱う必要がそもそもない」というのが僕なりの結論です。

プライバシーの侵害になるの?

また、今回の引用が「プライバシーの侵害だ」という意見もたまに目にします、が、なるわけねーだろ

例えば僕が「この小説の作者の名前って幾谷正っていうんだぜー」と公表されることで、プライバシーを侵害されますでしょうか。

というのも、「作家名」というものが本来、司法上ではしばしば「公人格」として捉えられるからです。会社名とかと一緒です。
僕という私人が、創作活動を業として行うため、公人として名乗る名義が著作者名です。
もともと「公」のために用いられるべき名称が「公表」されることで、何らかの害が及ぶとは考えづらいです。

仮に作者名のところに、公表していない本名が書かれてたとしたら、これはプライバシーの侵害でしょう。でも今回はそうではありません。
また「個人情報保護法違反」についてですが、これは業務上知り得た情報に関する法制度なので、今回の件で持ち出してるのは考えの足りないバカでしょう。

Twitterのアカウントがバレる? じゃあTwitterの名前と作者名を分離すればいいじゃん。
ひもづけられて困る情報を自ら進んでひもづけた人間の自己責任でしょ?

そもそも「BL小説を書いてるなんて知られるのが恥ずかしい!」という主張自体、何か「BL小説だけ特別扱いせねばならない」という偏見に基づいてはいないですか?

二次創作だから配慮すべきか?

いや、なんで法を守ってない人間に配慮しなきゃいけないんですかね

今回の件で一番僕がクソだなと感じているのは、論文という著作物を書いた研究者側も、著作権を守っている側の人間の一人なんです。
法律を守っている側が、法律を守っていない、知らない側のルールに合わせろ、と強要されているようにしか見えないんです。

「私たちは法を侵した活動をしているので、丁重に扱え」なんて傲慢が許されるわけないでしょ。日本は法治国家ですよ?

もちろんモラルという概念が大事なのは分かりますが、俺たちのモラルと彼らのモラルは違います。
自分に都合のいいルールを相手に強要すること自体がモラルの欠如です。

そもそも、法律というルールを守った上で、次にモラルの話をしてください。
ルールを守れていない人間が「ルールより俺たちの決めたモラルを大事に扱え」というのは、あまりに都合が良すぎます。
「私たちの決めたルールに反するから私刑にしよう」という本音が丸見えです。事実、現状が既にそうなっているでしょう。

二次創作という表現は、正直「法の支配が及ばない無法地帯」と成り果てています。
「表現だから無条件に守らなければならない」という主張も理解できますが、自由とはあくまで他者の権利を侵害しないという大前提に基づくものです。
今回の件にしろ、論文作者の表現と学問の自由を著しく害する立場として自由が主張されていますが、はっきり言って「どちらが公的に守るべき自由」であるかは明白です。

著作権違反というリスクを冒して活動してきた人間が、そのリスクを許容すればそれで済む話ではないでしょうか。

有害という表現は適切か?

いや、そういう評価も含めて表現じゃん。

僕も「こいつの作品はクソ」とか「害悪」とかたまに言われますけど、感想にしろ評価にしろ、する分には別に自由でしょ。

どうしてもその指摘が許せず、問題であり、著しく気分を害するものであるなら、作者が訴訟を起こして論文の作者を訴えればいいんです。
で、訴えられてない以上、外野は「許されたものなんだな」と認識するしかないんじゃないでしょうか。

この点については「作品の著作権者が自分の手で作品を守れ」としか言いようがないと思います。BLだとか二次創作だとか関係なく。

「小説を公開してたらクソだって叩かれた! うえーん><」っていう覚悟の足りないザコが、自由な表現の場から逃げ出しただけでしょ。
そんな奴どうせ、今回の件がなくとも遅かれ早かれ降りてますよ。
やめたきゃやめればいいじゃない。
自分の勝手で始めたくせして、やめるときだけ人のせいにすんな。
賞賛だけ欲しけりゃお友達だけに見せてろ。以上。

研究の引用に許可は逐一取るべきか?

僕は、あくまでも僕は、取らなくていいと思います。

機械学習にしろ、ビッグデータにしろ、大量に標本を採集する必要のある研究において、全ての引用物に対して許可を取れなんて言うつもりはありません。
これは文章分野だけに限らず、イラストを使った画像解析にも、音楽を使った音声解析、動画解析、あらゆる研究対象に波及しかねない問題です。
全てに許可が必要だという“一部の人間の主張するルール”が、公共の利益に対して及ぼす害は計り知れないものだと思います。
ただでさえ日本の研究は遅れてるのに、さらにハンデがつくのクソじゃん。

誰にでもアクセス可能な開かれたプラットフォームは、作者にとっても、読者にとっても、また研究者にとっても有用なものであるべきです。

モラルを守れだとか体の良い言葉を並べても、結局これらの主張は

「私たちは法を侵した活動をしており、著作者として振る舞う覚悟が足りず、不特定多数にも見せたいので、世間が法を越えた配慮をして欲しい」

という、聞くに値しない戯言です。
何で法律を守ってないモラルの低い連中の側に、モラルのレベルを合わせてやらなければいかんのですか。

著作権法を遵守するというモラルに基づき、適切な引用が行われるのであれば、WEB上に公開されるあらゆる著作を断り無く利用することに、僕は賛成の立場を表明します。
これは繰り返し申し上げますが、何も書いてない口ばかりの外野としてでなく、著作者という当事者の立場からの意見です。

仮に「現行法が間違っている」と主張するなら、法律改正なり、国外で活動するなり、好きな道を選んで活動してください。
口だけの連中はもうお願いだから黙って身の程をわきまえて。