Funny-Creative BLOG

電子書籍作家の幾谷正が個人出版の最前線で戦う話

二次創作が公式にデメリットしか与えない5つの理由

花九曜印 いなご甘露煮 EO缶 #5 150g

花九曜印 いなご甘露煮 EO缶 #5 150g

イナゴの佃煮で飯がうまいっ!!

こんにちは、性懲りもなく幾谷正です。

前回はTwitterという二次創作寄生虫の本拠地に火を放った結果、自分が返り討ちを喰らって凍結されてしまいましたが

参考:「はだしのゲンコラ村」を公式に問い合わせて燃やしたら僕が凍結されたという氷と炎の歌 - Funny-Creative BLOG

今回はなんと戦わずして勝つことに成功してしまいました。

togetter.com

いやまあ本当に僕は何もしてないんだけどね!!!!!!!

さて、今回は挑戦的なタイトルをつけてみましたが、そろそろ詳しく話します。
「公式は二次創作を歓迎すべきだ」という言説が世間ではまかり通っていますが、正直これは「権利侵害の盗人たちが自分たちの立場を肯定するために流した根拠のないウソだ」と考えています。

そこで今回は「二次創作が公式にとって得にならない5つの理由」と題して、これらの欺瞞を一つ一つ殴りつけていきたいと思います。

1.二次創作は公式にとっても利益になるというウソ

まず最初に断言してしまうと二次創作が存在することによって損をするクリエイターや公式関係者はかなりの数が存在します。

というのもこれは僕の経験談なんですが、実は大学生のとき僕はあるアニメにものすごくハマり、その作品のコンテンツに対して大体累計で20万円ぐらい散財する熱心さでした。
名古屋の学生でありながら夏冬のコミケではそのアニメの二次創作を買いあさり、オンリーイベントに遠征し、ファンの同人グッズや通販を手当たり次第に買いあさり・・・気づけば毎月のバイト代が吹っ飛んでいました。

ここで「おやっ?」と思われた方も居るでしょう。

そうなのです。僕が作品に対する愛情や応援として費やしていた20万円は、全て公式の許諾を受けていない二次創作に対して使っていたんです。
公式のグッズやイベントには多くて1万円も使っていませんでしたし、当然コンテンツの売り上げとして計上された額もそれに基づくものです。
その作品はすっかり続編も途絶えてしまいましたが、もし僕が公式にだけ使っていれば、他の視聴者もそうしていたら・・・と考えてしまうときがあります。
今考えてみると、自分が本当に作品のファンだったのか。ファンを名乗ることにすらためらいを覚えます。

僕は自分が「間違った熱狂」に陥ってると気づき、好きな作品の二次創作はあくまでお金のやり取りがないファンアートを見るだけに留めるよう、自制するようにしています。
しかし、”自分をファンと思い込んだ熱狂者”が間違いに気づくことは稀ですし、むしろ互いに自己肯定をし合いながら人数を増やしているのが現状です。

そしてもう一点。
損をするのは公式の人間だけではありません。
公式の許可を取ってコミカライズやノベライズ、グッズ製作に携わる人たちの利益を不当に奪っているということです。

たとえば『ガールズ&パンツァー』が、同人グッズの販売禁止を強調していることは、オタクの皆さんは既に耳にしていると思います。
これはあくまで推測ですが、この作品は舞台にしている大洗市の地元商店と協力して、作品を盛り上げてきたという経緯があります。
当然、大洗の地元商店がガルパンに関連する商品を出す際には、製作委員会の許諾を受けているでしょうし、利益のいくらかも著作権使用料として還元していることでしょう。

そんな地元商店の人たちが、ネット上でやり取りされる無許諾な同人グッズを目にしたら、どんな気持ちになるでしょうか。
残念ながら、作品やコンテンツが広く商業的に成功すればするほど、違法でアングラな同人ビジネスというのは不要なリスクを増大させ足を引っ張る要因にしかならないのです。

許諾を得て利用料を払って使っている人がいる以上、それを意図的にやらないというのは、犯罪者の心理と変わりありません。
どうしてもグッズを作りたいなら、地元商店と同じように公式から許諾を得て正々堂々とやるべきではないかと思います。

また、「同人グッズは公式の利益を奪うけど、同人誌は誰の利益も奪っていない」という考えは、作品に関わる一人一人のクリエイターの存在を無視した、想像力の無い人間の考えだと思います。

僕がラノベ作家だった頃、知り合いの中には原作付きの作品、いわゆるノベライズを仕事として受けている作家に何度か出会いました。
本来オリジナル作品で得られる印税は10%ですが、原作付きの作品は5%しかもらえず、残りの5%は公式側に納められるという条件になります。もはや消費税の方が多いのです。
しかも原作サイドから監修や指示が入るため、全く自由に書けず「オリジナルより大変だ」と愚痴をこぼしているのも聞こえました。
それでもノベライズが売れれば作家は利益を得られますし、公式にもいくらかお金が入ります。コンテンツの存続のために彼らが人知れず苦労しているのは事実です。

そんな事情を知ったうえで、「自由に書かれた同人誌の方が公式のコミカライズより面白い」という、心ない言葉を言う人を見たらどう思いますか?

繰り返し言いますが、同人作家は公式のイメージなど守る必要がありませんし、著作権使用料を納める必要もありません。
正当な利用料を払ってきた人間が居る以上、彼らは利用料を踏み倒している盗人に過ぎないのです。

2019.06.21追記

こちらの話を具体的な統計データをベースにご説明します。

xbusiness.jp

f:id:funny-creative:20190621223734j:plain
こちらのサイトで紹介されているデータによれば、同人市場は2012年から2016年の5年間で約80億円の市場成長を見せています。
特に伸びがめざましいのが、印刷費や配送料のかからない電子市場の成長によるもので、全てが二次創作でないにしろ、かなりの割合が含まれているものと思われます。

www.ajpea.or.jp

f:id:funny-creative:20190621223749j:plain
それに対し、商業出版のコミック市場は同じ5年間でおよそ300億円の市場縮小を起こしています。
もちろん景気の悪化や娯楽費の減少などの要因はあるでしょうが、先ほど紹介しましたとおり、同人市場は増益しているにも関わらずです。

例えば本来支払うべき著作権利用料が支払われていたり、あるいは競合するコミカライズ作品の売り上げが商業出版が独占していたならば、これほどの減益は起きなかったでしょう。
あるいは二次創作を行っている作家たちが商業作家となって出版社の利益に貢献していたのなら、減益どころか同人誌と同様に増益していたことすらあり得たかもしれませんね。

2.二次創作は作品の宣伝になっているというウソ

これも僕の経験談ですが、ネットやSNSで自分の作品を宣伝するのはとても難しいことです。
目にする誰もが僕の作品やキャラクターのことを誰も知りませんし、知ってもらわなければなりません。
商業作家として書いていた時代も、同人作家として一次創作を出している今も、その点については変わりがありません。

ですが、「既に知られているキャラクタ」「既に知られている作品」の宣伝であれば、その難易度は大きく下がるでしょう。
普通にTwitterを利用していれば、人気作品や人気キャラの漫画、イラスト、同人誌が無数と言って良いほど流れてきます。
それに対して、出たばかりのまだ誰にも知られていない作品の宣伝が流れてくることはごく稀です。

「二次創作を描かなければ誰にも見てもらえない」「一次創作なんて投稿しても誰も興味を持ってもらえない」
そんな被害妄想に捕らわれてしまっている作家は少なくないでしょう。
出版社やゲーム会社は「SNSで作品の宣伝をするのは難しい」と言っているのをよく聞きますが、その難易度を上げているのは誰なんでしょうか。

少なくとも僕自身は、いつもこういった恐怖や被害妄想に耐えながら、歯を食いしばって自作の宣伝をクリエイターとしてやってきましたし、これからも続けます。

もちろん、二次創作される側の作品やコンテンツにとっては無料で宣伝がしてもらえるようなものですし、それを止める理由はないでしょう。
とはいえ、「俺たちは宣伝をしてやってるんだから著作権侵害ではない!」という開き直りは、くだんの漫画村が取っていた態度となんの変わりもありません。
再三書いている通り、彼らは漫画村と同様に「著作利用料」という本来払うべき金銭を不当に踏み倒して営利を得ている事実をお忘れなく。

また、二次創作のムーブメントが公式側に及ぼす影響はとても大きく、最近では「二次創作されやすいキャラを出そう」「このキャラは二次創作受けしないから出さない」といった考え方をするクリエイターも多く見られます。
「二次創作されればヒットする」という狭窄な考えにとらわれて、多様性に欠けた均質で似たようなゲームやキャラが作られてしまう原因の一端はここにあります。
出版社やゲーム会社といった企業の広報力の不足はこうした他人任せな考えでやってきたことが原因の一端にはあるでしょう。

そして、ファンアートと称して自分の同人誌を宣伝したいだけの人間はよく目に付くようになりました。
「自分の同人誌さえ売れれば、原作に悪いイメージを持たれても、他のファンが不快になっても関係ない!!」と豪語する二次同人作家は、特に女性向けでは多く見られます。
「二次創作してもらえるようなキャラクターさえ作れば売れる!」などという低い志でポルノじみた魅力のないキャラクターをひたすら押し出し、結局、キャラデザインを盗用した同人作家だけが売れて原作はろくに売れず終了。
もともと成功している作品と、それに寄生するイナゴたちだけが勝ち続け、気づけば有名な作品とその二次創作しか目に入らない囲い込みができているわけです。
売れない作家は全員商業をやめてFGOや艦これの二次創作をするのが正解って話ですね。

この点については次の章でもう少し掘り下げて話をします。

3.二次創作は将来の作家を育てるというウソ

tkw-tk.hatenablog.jp

まずこちらの調査によると、漫画家として本を出している人は2010年で6000人ほど居ると言われています。
対して、最大の同人イベントであるコミケには4万8千件のサークル応募があるそうです。
もちろんこの全てが二次創作ではありませんので、割合を計算してみます。

http://ascii.jp/elem/000/001/606/1606680/ascii.jp

こちらの調査によると、6~7割が二次創作を出しているとのことなので、およそ30,000人の二次創作者が居ると言われています。
一次創作で申し込んでいるのは1割ほどとのことなので、およそ4800人ぐらいのアマチュアでオリジナル創作をしている人がいる計算になります。

世間ではよく「二次創作は優れたクリエイターを育てる土壌になっている」と言われますが、一体この30000人のうちのどれほどが、プロの作家になると思いますか?
仮にある日いきなり二次創作が禁止されでもしない限り、この3万人は将来もずっと二次同人作家を続けるでしょうし、辛くて大変で儲からないプロの作家になんて絶対にならないでしょう。

また、二次創作という安易な道に流れるのは漫画家や作家だけではありません。
「人気アニメの絵を描く仕事がしたい」と思ったら、アニメーターになったりゲーム会社に入ったりする必要はありません。同人誌を出せば欲求は満たされます。
好きな作品のコミカライズやノベライズをする作家になりたければ、商業作家になって出版社とコネを作って仕事をするなんて遠回りもしなくていいのです。
具体的なデータを見つけることはまだ出来ていませんが、「二次創作が存在したことでクリエイターになった」人数より、「二次創作があるおかげでクリエイターにならずに居られる人」の方がずっと多いと思います。

これは経験談ですが、僕は作家として大学のころから今までに、色んなクリエイターの人たちと会ってきました。
8年前に二次創作をしていた人たちは、本業のかたわらずっと二次創作だけを続けていますし、そこからプロになったという例は正直一人も見ていません。
一方で僕は、一次創作だけを8年前からずっと続けてきましたし、「二次創作に育ててもらった」なんて全く感じたことがありません。

また、このデータでは可視化されていませんが、最近は電子同人という媒体も活発です。
僕自身、電子書籍のみに活動の形態を絞って作品をだしていますが、印刷料というコストのかからない電子媒体は利益をだすことがかなり簡単です。
口で言うだけでは説得力がなさそうなので、ちゃんと客観的に証明可能な具体的な数字を出してみたいと思います。

www.dlsite.com

ちょうど良い例があったので、こちらのDLsiteで販売されている「艦〇れ」なる作品を元ネタにした、おそらく二次創作と思われる作品を販売しているサークルを例に取ってみましょう。
この「艦隊ジャーナル」というシリーズは毎回1000DLほどされており、総集編は3000DLぐらいされている人気シリーズで、既に第17号まで出ている人気シリーズのようです。
DLsiteの販売料率をもとにExcel使ってこのシリーズが累計幾らぐらいの利益を得ているのかガチで計算してみました。

f:id:funny-creative:20180620235656p:plain

はい、二次創作で2100万円の収入だそうです。

第1号から今まで4年掛かっているみたいなので、単純に年間500万円ほどの収入を得ているようですね。
立派なプロの二次同人屋と言って差し支えないのではないでしょうか。
ちなみに合間合間に出しているオリジナル作品は200部ぐらいしか売れていないので、こちらを専業にするのは無理そうですね。
これを「非営利なファン活動だ」と言う人が居るなら、一度「営利」という言葉の意味を辞書で引いてみることをオススメします。

おそらく、商業媒体でプロとして艦〇れのコミカライズを担当してきた作家達の誰よりも、この人が一番多く稼いでいるのは間違いないでしょう。

togetter.com

yzr500.exblog.jp


一方で、同じ2014年に商業媒体で公式のコミカライズ作家として漫画を描き始めた漫画家が田中謙介公式の横暴で相次いで打ち切りにあっています。
これに対して無許可で好き勝手やってた同人作家は年間500万円の収入です。
あまりにアホらしすぎて、一体誰が「プロになって商業作家になろう」だなんて思えるんでしょうか。
これはかなり極端な天と地の例ですが、「商業の都合に振り回されたくない」という消極的理由から「二次創作で同人をする」という選択肢に流れている作家はかなり多いと思います。
せめて一次創作をしろよって話なんですが、さっきも言った通りそっちは大変で儲からないので、簡単に儲かる二次創作に流れますよね。

電子書籍は儲かるというのは間違いありませんが、こうした二次創作の電子販売で稼ぐ人間が増え続けることが、日本の創作の未来にとって健全なあり方なのでしょうか。
彼らをクリエイターだと認め、10年後漫画家の数が半分に減り、二次同人作家の人口が2倍に増えている、という将来像もこのままでは現実的にあり得る未来です。

もちろん一次創作がなくなれば二次創作もできなくなりますが、元ネタの作品は海外から輸入するという手も存在します。
現状、『アズールレーン』のような海外手動のコンテンツが日本で受け入れられるような例も増えてきていますし。

海外から作品を輸入し、その非許諾な商品を作って営利を稼ぐ・・・なんて、まるで数年前までのどこかの海賊版国家の有様ですね。

4.二次創作は創作のスキルを高めるというウソ

これは僕が一次創作者として感じていることですが、創作においてもっとも難しい作業はキャラクターや人物を作る過程です。

どんな作品のどんなキャラも、最初に目にするいの一番は読者にとって”単なる他人”です。
その他人を、どうやって読者に共感させ、理解してもらい、受け入れてもらうかが、作家としての腕の見せ所であり、全ての創作はこうした「他人を他人じゃなくする一連の作業だ」と僕は考えています。
(※ もちろん他のパターンもあると思います。あくまで僕のばあい)

その一番重要で難しい過程をすっとばして、いともたやすく「受け入れられるキャラを使える」のが二次創作の利点です。
そんな楽な創作ばかりしてきた人間が、果たして作家としての実力を養うことができるのでしょうか。

これに関しては『猫神やおよろず』とか『夢喰いメリー』みたいな「大人気東方同人作家が描くオリジナル作品!」みたいなやつを見て、面白いと思えるかどうかご自身で判断していただければと思います。
また先ほど例に挙げた艦隊ジャーナルを出されている同人作家さんが、一次創作では二次創作の10分の1ほどしか売れてない、みたいな点からも推察できることと思います。

また、これは数値として表面化していませんが、「作家の著作権意識やモラルの低下」という問題もあると思います。
日常的に他者の著作権を侵害し、トレスやパクリを平気で行い、「訴えられなければセーフ!」と豪語する自称クリエイターはたくさん見られます。
彼らが仮に商業作家やゲーム会社のスタッフとしてプロになったとして、その瞬間いきなり正しい著作権意識が身につくなんてことあり得るのでしょうか。

「公式がトレスしていたことが判明!」なんてニュースが日常的と言っていいレベルで各所から聞こえてきますが、元をたどっていけばそうした低下したモラルや「訴えられなければグレー」という甘い同人意識のクリエイターがそれだけ跋扈しているだけでしょう。
僕のようにプロ意識の高いクリエイターが個人でも稼げてしまうのは、逆に言えばそれだけプロのレベルやモラルがアマチュア以下に落ちているだけだと僕は感じています。

2019.06.20追記

このブログを読んだ読者の方から、興味深い記事のことを教えていただきましたので、関連してご紹介したいと思います。

news.nicovideo.jpnews.denfaminicogamer.jp

あの『ドラゴンボール』の立役者である元集英社(現在は白泉社)の編集、鳥嶋和彦氏ですが、こちらの対談でコミケについて以下のような発言を残されています。

Q.持ち込みを待つよりも、同人誌などを出している人をスカウトするのが新人の発見には手っ取り早いと思いますが、それでも持ち込みから新人を発掘する理由はなんでしょう?

鳥嶋氏:
 じつはコミケに興味を持ちまして、堀井雄二さんと取材に行き、記事ページも作ったことがあります。コミケのパンフレットに「ジャンプ」というロゴも載せ、コミケのファンから大ブーイングを買ったんですが、そこで何名かスカウトし、事後に打ち合わせをしました。その結果、コミケにいる人たちはぜんぶダメだと解りました。

 なぜかというと、好き勝手に描くことはできるけど、直しができないんですね。ということはプロに向かないんですよ。
 直すというのは、一度描いたものを、読者の目線に近づけて繋げるということです。ということは、読者に繋げられない作家であり、それでは原稿料がもらえないということですね。

 非常に厳しいことを言うようですが、基本的にコミケのマンガは、人のキャラクターに勝手に乗っかり、ごっこ遊びをしているだけです。

このコミケのマンガは、人のキャラクターに勝手に乗っかり、ごっこ遊びをしているだけという発言は、僕がこちらの記事で伝えたかったことを経験者の目から非常に端的に表していただけています。
僕は別に編集者というわけではありませんが、いちおう元プロの作家として、こちらの発言については大いに同意させて頂きたいところです。

5.二次創作は作品のイメージを損なわないというウソ

皆さんはアニメ『パラッパラッパー』のOPである『LOVE TOGETHER』という楽曲にどんなイメージを持たれていますか?

皆さんは『ロックマン8 』のテーマ曲である『ELECTRICAL COMMUNICATION』という楽曲にどんなイメージを持たれていますか?

ロックユニットであるCOMPLEXの楽曲『BE MY BABY』という楽曲にどんなイメージを持っていますか?

ファンが他人の著作を利用して作った二次創作が、原作のイメージを上書きしてしてしまって、二度と消えない状態にならないと断言できますか?

ちょっとこの例えはあまりに極端な例なので卑怯かも知れませんが、分りやすく言ってしまえばこういうことです。
作家やクリエイターが苦労して作品を生み出すのは、お金や名誉や地位ではなく、「見る人に与えたいイメージ」が存在し、それを伝えたいからです。
それを無思慮で、身勝手で、作品をオモチャにして遊ぶことしか考えていない、作家の苦労など味わったことのない人たちが、あまりに簡単に台無しにしてしまえるのが情報化社会の恐ろしさです。

ネットの発達によって、作家と読者が双方向に情報をやり取りできるようになってしまった今、読者の発信した情報が作品に「なんの影響も与えない」と言い切ることは決してできません。

これは単純に小話なんですが、以前Twitterで「アズールレーンには艦これの愛宕みたいなショタ好きのキャラがいない」とかよく分らないことを言い出す同人作家さんを目にしました。
僕は艦これの本編でその愛宕という名前のキャラが、年下の少年に変質的な愛情を抱くシーンは見たことがありませんし、そもそもそんな描写をされるような年下のキャラが本編に登場した記憶もありません。
あの人達は一体何を見てそんな存在しない設定を事実だと思い込むに至ったのでしょうか。恐ろしい話です。

「作者と読者がみんなでコンテンツを作り上げる」という時代は、同時に「誰もがコンテンツを簡単に書き換えられてしまう」という恐ろしさも同時に併せ持っています。
人間の頭というのは意外と単純にできていて、一度刻みつけられたイメージというものはそう簡単に変えることができませんし、都合良く忘れさせることは誰にもできません。

僕がなんで漫画のコラを無邪気にアップロードする無垢な加害者たちに怒りを抱いたのか、そろそろ察してもらえたのではないでしょうか。

このあたりはわりと「お金を使わないでオモチャにできるフリー素材」と見なされていることが原因かもしれません。
「きちんと許可を取り、著作利用料を払う」という当たり前のマナーが共有されれば、作品が誤ったイメージで毀損されることはなくなるのではないでしょうか。

本当に作品を尊重していて、イメージを傷つけるつもりもなく、原作者に貢献したくて二次創作がしたい本物のファンなら、「許可を取れない」と感じるはずがありません。
もし逆に「許可を取れるわけないだろ!」と言い出す人がいたら、その人は間違いなく作品のイメージを毀損している自覚がある人なので、聞く耳を持たないのが正解だと思います。

まとめ

「二次創作に甘くしたところで原作サイドにとって何の得もないし、作品を傷つけられるし、作家も減る一方ですよ」という正論を長々と語ってきましたが、ここで一つ疑問が残ります。
どうしてこんな明白な事実をきちんと指摘して、批判する言葉を、本来作品や作家を守るべき立場にある公式や出版社が主張してこなかったのか、という点です。

おそらく公式サイドの中には「二次創作を禁止することでファンに嫌われたら困る」と弱腰な態度を取っている場合も多いでしょうし、それが二次同人作家の増長を促した側面もあるでしょう。
しかし、これは大きな勘違いだと思います。
二次創作を使って金儲けしたいだけの違法業者と、二次創作しか買わない自分をファンだと勘違いしているアホ共は、どれだけ切り捨てても作品の売り上げには何の影響もありません。

最初にあげたウマ娘が二次創作を禁止したことについて「同人誌が出せないなんて価値がない!」みたいな物言いをしている人をTwitterで多く見受けます。
そんな副次物にたいしてしか興味を感じていない人間を作品のファンと同じに考えてはいけませんし、そういった「ファンのふりをした盗人たち」を増長させてきた現実にそろそろ向き合うべきタイミングではないでしょうか。

二次創作を禁じたところで、むしろ公式の出す商品やグッズや書籍を買い求めるファンは増えるでしょうし、作品に携わるアニメーターやプロの作家に対する敬意も取り戻せることでしょう。

俺にマウントを取ってきた二次同人イナゴどもを一人残らず滅ぼすまで幾谷先生の戦いは続く!!!!!