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電子書籍作家の幾谷正が個人出版の最前線で戦う話

Web漫画って正直似たようなデスゲームばっかりだよね

一時期よく無料のWeb漫画を読みあさっていた時期があるが、オススメされる人気作は大体どれも似たようなデスゲーム系だと相場が決まっている。

 
目が覚めると主人公は知らない場所にいる
→ろくにルール説明もなく命懸けのゲームが始まる
→人がグロく死んだりショッキングな展開に
→ルールを把握した主人公がゲームをクリアして解放される
 →同じ展開の繰り返し
 
大体これがテンプレ的な第一話の構成だ。
Web漫画をそこそこ読む人も、全く読んだことない人も、「なんか見たことがある」という既視感を抱くことだろう。
 
ぶっちゃけこれは『バトルロワイヤル』とかから連綿と続く、デスゲーム作品と呼ばれるテンプレそのものなのだ。
GANTZ』とか『神様の言うとおり』みたいな作品もこれの亜種に当たるので、どれかひとつでも見たことがあれば、どんな話なのか大体想像がついてくる。
登場人物たちはルール説明のないゲームが突然始まって戸惑うが、読者はだいたいどんな話か既に知っているというメタ構造も含めて使いやすいテンプレだ。
 
「効果があるからこそ多用されるし、多用されれば陳腐にもなる」
(『銀河英雄伝説』――ルパート・ケッセルリンク
 
あとは同じテンプレートを使って、作者が自分の創作性をどこかしらで発揮すればいい。
例えば魅力的なキャラ描写とか、手の混んだ頭脳バトルとか、高い画力を活かした演出とか。
同じテンプレさえ使えば誰でも人気作が描けるというほど甘くはない。どこかに必ず一つはその作者にしか描けない魅力がある。
逆に言えばその魅力一つさえあればそれでよくって、残りは皆と同じものを描けばいいのである。
 
ところでこの「目が覚めたらゲームの世界に居た」って導入、なんだか死ぬほど見覚えがある。
 
ああそうだ。
なろうで流行ってる異世界転生モノと同じじゃん。これ。

 

最近はWeb漫画発としてデビューする漫画家も増えているが、このデスゲーム系作品はなんだか存在感が少ない気がする。
そもそもこの系統の作品でデビューした作家って、今は何書いてるんだろうか。そもそも、あれらの作品はちゃんと完結したのだろうか。
「あの漫画を描いた人は 今何描いてるんだろう」と思って調べてみたら、何も描いてなかったりする場合も多い。
 
きっとどの作品にも「ゲームを始めた人間の思惑」とか「隠された世界の真実」みたいな謎があったのかもしれない。
結局どれ一つ真実を知らされないままになっているが、自分でも意外なほど気にならない。
流行の先駆けになった商業的成功作の『GANTZ』が“あのオチ”だったのを目にして、他のデスゲームモノも「どうせ“ああいうオチだ”」という共通理解が出来上がってしまったのかも知れない。
 
なろうの異世界モノだと、始めから「神様の気まぐれ」ってことにして説明をぶん投げている。
開始一話目時点でデウスエクスマキナを登場させて、煩雑な初期設定を省略できるのがフレームワークの強みだ。
 
もっとも気軽に無料で読める分だけ、気軽に忘れられてしまうことも多い。
「そういえばあの作品の続きどうなっただろう」とたまに気になって見に行くのだが、その頃にはもう更新が止まっている。
明かされなかった世界の謎を気にかけることもない。また別の無料で読める作品をさっさと探しにいくだけだ。
無料媒体で作品を読んでいる読者の冷酷さを僕が恐れているのは、僕自身が無料で読める作品に対して冷酷に当たってきたからだ。
 
 別にweb発の作家を軽んじているわけではない。
彼らの持つ特化した魅力はプロの世界でも十分通用するものだと僕は本気で思っている。
問題はそれ以外の部分を努力したかという当人の問題でしかない。
確かに一つの教科で100点を取れる学生は、推薦入学とかなら他が平均点に届かなくても有利に戦える。
けれど普通の受験を同じように受けることになれば、全教科平均点を取れる学生に負けてしまう。
 
Web小説でデビューした作家が今後どうなっていくか、サンプルケースはまだ少ない。
しかしWeb媒体という広い枠組みで見てみれば、意外とよく似た歴史の繰り返しだ。
彼らが今後どんな道を歩むのか、先人たちの足跡を辿れば見えてくるものもあるだろう。