セルフパブリッシングは自作の宣伝を積極的にすべきだと思ったので全く宣伝しないとどうなるか検証してみた。
自分の作品を「買ってください」「見てください」と声を上げるのに抵抗がある作家さんも多いと思います。
自分も初めてコミケで本を売ったとき、通りすがる人たちに「見てください」と声を掛けるのはとても抵抗がありました。
「無視されたらどうしよう」「迷惑だったらどうしよう」とか色々と考えてしまいます。
同じように抵抗を持っている作家さんへ「するべきだ」と言う前に、本当にすべきか否か確かめるためにある地味な検証を行ってみました。
無料セールを一言の予告もなく行ってみた
過剰な宣伝は避難されますが、遠慮しすぎるのもよくありません。作品を知っていただくせっかくの機会を逃してしまいます。
というわけで、あえて逃すよう心がけてこちらの作品を無料セールしてみました。
そもそも無料セールの意味
「電子書籍には旧来の書籍出版のような棚や平台といった概念が存在しない」とよく言われますが、自分は同じく語れる部分があると思いました。
平台は本屋に立ち寄った人が、未知の本に出会うための場です。おそらくAmazonKindleなど多くのサイトにおいて、平台の役割を果たすのはランキングだと思います。
動画サイトで動画を探すとき、pixivで良いイラストを探すとき、多くの人が見るのは本日のランキングです。無数の新着投稿を一件一件確認する人は少ないです。
無料で置くことでロイヤリティを得る機会を逸しますが、作品や作者の存在を知ってもらう機会を得るという、等価交換がKindleの無料セールです。
ランキングに載るための方法として、よく行われるのが複数アカウントを登録することによる閲覧数の底上げ。つまり自演とよばれる活動です。
無料閲覧サイトならまだ対費用効果は望めますが、Kindleに関しては買わないと反映されないので大変です。出版社の本も個人出版の本もまぜこぜなので、1ページ目(1~20位)に入るのも容易ではありません。
そこで役立つのが、Kindleセレクトの機能である無料セールの実施機能です。ここではいかに人目を引くことができるかが勝負になります。
少ない機会を逃さない
無料セールは90日間中、5日間しか行えません。また、5日間連続でセールを続けても数量がばらけてしまうためランキングに載るのは難しくなります。
自分は発売開始と同時にTwitterで多量のポストを一日間行い続けて、なんとか全体ランキング2位まで伸ばせました。本の存在感を出せたので、以降の販売数やレンタル数も好調にいっています。
知られる→買われる→知られる→買われる、のループに作品を上手く乗せることができました。
ただ、存在感というのは何もしなければ目減りしていきます。自分はこれを本の鮮度が落ちると勝手に呼んでいます。
再就職してから長らく宣伝を放っておいてしまったことで購入数も落ちてきたので、鮮度を取り戻すためにもう一度セールを行うことにしました。シルバーウィークの開始とタイミングも良かったので絶好の機会でした。
絶好の機会を棒に振ってみた
で、話を本題に戻すと、どんな宣伝をするか考えてたんですが“今度は宣伝を全くしないとどうなるか”を試してみました。
特別なことは何もしていません。Twitterやblogを普段通りに更新し、セールのことについては一切触れないだけです。
一応、ランディングページのセール情報に小さく記載してはいたんですけどね。
前回の無料セールでは全体2位でしたが、今回は一日行ってみて全体18位でした。いちおう1~20位内で1ページ目ですが、かなり下の方なので目立たない位置です。
また二回目のセールということで、既に持っている方は手が伸びなかったのも大きいでしょう。逆に言えば3回4回と繰り返すたびに効果は薄れていくと思います。
宣伝を行わなかった結果
KDP利用しない方には馴染みのない画面でしょうが、これが作品のDL数を示すグラフです。無料セールの数のみが表示されるようフィルタリングしています。
前回、宣伝がんばったときは550冊ぐらい。今回のセールでは130冊ぐらいでした。
さっぱりDLされないデータを出すつもりだったので、意外と気付かれてDLされててビックリしました。無料セールが行われてないかマメにチェックしている利用者が目安100人ぐらい常にいらっしゃるのかも知れません。外乱の少ないデータが取れたのでこれはこれで貴重かも。
宣伝をもっと行っていれば、300冊ぐらいまで伸びていたかもしれません。とはいえ同じ媒体で何度も宣伝を繰り返しても、既知の情報を再度伝えるだけになってしまうので、効果的ではありません。
最後にやってみて
3回目の無料セールを打つときは、既にDLしていただいた700人近い方以外に本の存在が知られるようにしなければ効果が上がりません。
知られれば買われる、買われれば知られる。このフィードフォワードなループへ作品を入れるためには、まずポテンシャルとなる初速を充分に与える必要があります。
売上を伸ばす努力は考え始めたらキリがありませんが、伸ばさないための努力は簡単です。何もしないことです。何もしないことで、私たちは常に売れない努力をしているんじゃないかなと感じました。
まあこんなことしてるヒマあったら売るためのもの作れって話なんですけどね。2巻の原稿書こう。