Funny-Creative BLOG

電子書籍作家の幾谷正が個人出版の最前線で戦う話

「二次創作の影響がどうかはわからんけど、アマチュアのオリジナル創作はいま元気ですよという話」を読んで

funny-creative.hatenablog.com

先日投稿したこちらの記事が僕の想像してた以上に読まれまくって、あっちこっちで爆発や炎上や論争が起き、なぜか僕の記事を拡散した人がオタクに叩かれまくってアカウントを消してしまうとか、まあだいぶ世紀末なことになってしまいました。
こんにちは、幾谷です。僕は悪くない。

そんな中、Twitterでこんなメッセージをいただき、その方が書いたこちらの記事に目を通してみました。

note.com

今回はこちらの記事を読んで、僕が「これは誤解を与えてしまったな」とか「これは考え違いだったな」という返信をしておきたいと思います。
言ったら言いっ放しというわけにもいきませんし、せっかく自分の言葉に応じて考えを残してくれたので、何か返しておきたいという私的な考えです。
ほぼ公開私信といっていいものなので、あまり記事としてのおもしろみもないと思います。

また、最初に言っておきますが、僕は個人的な経験から二次創作をしている同人作家の一部に物凄い嫌悪感を抱いていますし、感情的な部分がないとは全く思っていません。

トラブルに関しての詳細はこちら
funny-creative.hatenablog.com


むしろ、わざと「僕はお前達に怒っているんだ」と伝える意味で、できるだけ感情を載せようと意図して書いています。
そうした怒りや嫌悪含めて僕の意見ですし、むしろそこをひた隠しにして書いたところで、ただの嘘です。

なので「データでこうなってる」という話より、やや「僕はこう思ってる」という感情論寄りの話が多くなることについては、あらかじめご了承ください。

「 オリジナル同人文化の現状」について

元記事の主旨は「二次創作ジャンルが活況なせいで、オリジナルが割を食っている」だと理解しているのですが、もしそうであれば同じ文化圏の中で隣接する二次創作とオリジナル同人は「人気の二次創作が誕生したタイミングで、オリジナル同人が低調になる」などといった傾向が出るのではないかと思われます。

しかし文化全体の実数として、少なくともここ10年に限定していえば「二者間に好調と不調の相関関係があるとはいえない」、「それはそれとして近年のオリジナル同人は全体で数を増やしている」というのが私見です。

自分は儲けや実利を優先するために電子書籍販売オンリーの形で活動していて、リアルのイベントに出たことは数回程度しかありません。
(その中にはコミケだけでなくコミティアや、文フリなども含みます)

例えば以前には、QRコード付きカードで電子書籍を販売する、みたいな遊びも試してました。
funny-creative.hatenablog.com

ただ、このQRコード販売含めて、どうしても「儲からない」という壁が隔たってしまって、実イベントからは足が遠のいてしまっていました。
なので「年々参加サークル数が増えている」という指摘には驚かされました。
その割には、Twitterやっていて、人のやってる一次創作の宣伝や話題が流れてくることって皆無といっていいほどないんですよね・・・。

Twitterでも何度か指摘されたんですが、「同人作家が増えてるのは二次創作が有利だからじゃなくて、同人誌が商業より自由で敷居が低いからじゃないか」という話がありました。
すっかり忘れてたんですが、当の僕自身、「商業作家がめんどくさすぎて同人で活動することにした」という典型例なので、同人作家が一次も二次も増えてるのは〝それに比べても商業がウンコすぎる〟という事情に他ならないなと気付かされました。

ただ、ここでちょっと意地悪な話をするんですが、〝好調〟という言葉の使い方に関してです。

ここで示されてるデータでは確かに「人数の増減」は現れてるんですが、「売り上げ」とか「実売数」っていう商業的成功の目安が一切現れてないんですよね。
単なる趣味のレベルとして一次創作をしている人はもちろん増えてはいるんですが、その中で「対価をもらって儲けを出して副業と言えるレベルまでやってみたい」というレベル感の作家ってそこまで多くはないのでは? という疑問です。

コミティアみたいなイベントって、どうしても「お金をたくさん使って売れない本を出す」という趣味的意味合いが強く、「経済的に活況である」という確信は持てませんでした。
人数が増えればいいのか、売れればいいのか、その辺りの基準を定めず書いていた僕もめちゃめちゃ良くなかったんです。
今回の生放送では山田太郎議員のような政治家や、夏野剛さんのようなプラットフォームビジネスをしている経営者の人間もいたので、「国策としてどちらが正しいか」という視点で話させてください。

確かに一次創作だろうと二次創作だろうと、売れればそれだけ経済は循環しますし、そこに貴賤は存在しないと思います。
ただ、「稼げるコンテンツ」や「稼げる作家」が二次創作ばかりに集中してしまっても、それって国内でスケール出来る範囲は限られますし、海外にだって売り出すことは困難ですよね。
実例としてもTYPEMOONとか竜騎士07みたいな、企業レベルの成長を遂げた同人サークルもありますし、一次創作同人から外貨獲得のチャンスが生まれることはあり得ます。
逆に二次創作てどれだけ売れても、せいぜい海外割れサイトに放流されて読まれるぐらいがオチで、正規の流通ルートで国外に発信したり、外貨獲得に繋がることはないと思います。
法律や制度を変えてまで奨励する経済的メリットはゼロなんですよね。
むしろ、将来TYPEMOONみたいな同人サークルに育つ可能性のあった才能ある人間が、一時的に安易に稼げる二次創作に流れるデメリットの方が問題じゃないかなと思います。

例えば実際の話として、自分の友人でもずっとコミティアで一次創作の本を出していた作家がいました。
彼は売り上げが少ないながらも楽しそうに活動していたんですが、あるとき「試しに二次創作をコミケで出してみたら、今までの一次創作より跳ぶように売れた」と嬉々として話してくれました。
彼はそれ以来、二次創作を中心として活動するようになり、儲けも出ていて、一次創作をすることはなくなりました。

こういう話って、このデータからは一切見えてこない実情なんですよね。
これはあくまで一例なんですが、僕はこの経験から「収益や実利を優先するなら一次創作はやめていくのではないか」という考えを自分は持ちました。
僕もなんだかんだ言って元プロの商業作家ですし、正直、儲けの出ない創作を意地や根性だけで続けるのはぶっちゃけ無理ですし、多少の儲けは出てないと続かないなと思ってます。
(実際、趣味同然でやってた作品を1つ、儲けが出ないからという理由で嫌になって途中で投げ出しました)

その意味で言うと、「お金儲けを目的として活動する利益を出せるレベルの一次創作サークルが増える」が理想的な話で、現状の山田太郎が提唱している政策は、それを阻害してるんじゃないかなという話でした。
僕も別に国家の利益とか考えて発言するタイプじゃないんですが、どうしても議員さんの居る場だったので、どうしてもそっちに考えが引っ張られてしまいましたね。

電子書籍ストアと二次創作」について

まずこれ、だいぶ誤解があって申し訳なかったんですが、「二次創作よりオリジナルが売れない」というのは、事象としての話ではなく、「同時期に出てる二次創作小説作品に比べて俺のオリジナル小説がDLsiteで売れねー!」という経験があったら心が折れるよね、というたとえ話でした。
文章下手くそですみません。

また、「ビジネス上有利」というのは、最終的な売り上げだけの話ではなく、たとえば「キャラデザインや設定、世界観を考える時間や労力」というコストも含んでの話です。
その手間が最初から存在してない二次創作の方が、かかるコストが少ない分、作品を出すための準備が少なくて有利だよね、というニュアンスも含んでいることは改めて強調しておきます。

二次創作も扱うDL同人サイトの中で、全年齢版とアダルト版を持つDLsiteの2019年間ランキングでは、ついに上位100作品の全てが著作権上の原作・原案を持たないオリジナル作品が占めています。

ほとんど耳かきボイス作品じゃねーか!!!!!

っていう本音は置いといて、いや、置いとけないな。いくらなんでも多すぎる。
正直、漫画とかCGの売り場と音声作品の売り場分けて欲しいんですよね、DLsite。普通に使いづらいし。

  • 2020.01.10追記

「二次創作の影響がどうかはわからんけど、アマチュアのオリジナル創作はいま元気ですよという話」を読んで - Funny-Creative BLOG

思うところあるのであとで記事にしますが取り急ぎ。耳かきボイスってつまりはドラマCDやラジオドラマ群の亜種であり立派なクリエイションなので、こういうパフォーマンスやめたら味方増えると思いますよ。

2020/01/10 12:23

思うところあるのであとで記事にしますが取り急ぎ。耳かきボイスってつまりはドラマCDやラジオドラマ群の亜種であり立派なクリエイションなので、こういうパフォーマンスやめたら味方増えると思いますよ。 - natukusaのコメント / はてなブックマーク

僕は作者に伝えたいテーマやメッセージ性のない作品はすべてポルノだと考えてて、耳かきボイスってただのシチュエーションポルノだと思ってます。
いや、僕も好きですし買ってるんですが。買ってるからこそ、ドラマとは全く異なるジャンルだと思ってます。

それに僕は味方を増やしたくてやってるわけじゃなく、自分の正直な気持ちが伝わればどうでもいいので、今後もこの芸風です。

  • 追記終わり

話が逸れました。

とりあえず成年向けの方は一端置いといて、全年齢向けの方に限定して話をさせていただきます。
確かにこのGRINP先生の作品とかほぼ商業作品って言えるぐらいめちゃめちゃ売り上げ好調ですし、いい作家育ってるなって思いました。
ただこれ以外のマンガ作品って東方二次創作がチラホラあるぐらいで、そんなに居ない気がします。

ちなみに2018年に目を移してみると、Check Mate!というサークルの艦これ二次創作が目に入ります。
こちらのサークルが4年間で2100万円の利益をたたき出しているという指摘については、以前の記事でも書きました。

僕の印象の中では、まだ一次も二次も本格的に電子同人に参加しているサークルの総数が思ってるより少なく、まだ有効なデータが揃いきってないと思うんですよね。
そういった状況で、今後増えていくのがGRINP先生みたいなオリジナルのマンガを描く人か、Check Mate!のような二次創作を描くサークルなのか、これから結論が見えてくる状況じゃないかと思います。

ちなみに僕自身、販売できるストアには手当たり次第出しまくってて

BOOTH
BOOK☆WALKER
理想書店ボイジャー直販)
Kindleストア(Amazon
紀伊國屋書店
楽天Kobo
BookLive!(凸版印刷グループ)
Reader Store(Sony
ブックパス(au
iBooks Store(Apple
DLsite

以上の10ストアで自作を販売してます(もっとあったかも)
その中で現状一番売れてるのはKindleで、次にBOOK☆WALKER、Reader Store、BookLive!って感じです。
DLsiteやBoothみたいないわゆる同人ストアって呼ばれるようなところの売り上げは実は一番低いですね。

また、二次創作禁止な電子ストアってAmazon KindleApple iBooksのような外資系ストアが顕著で、逆に二次創作がOKなストアって日本国内展開のみの国産ストアばかりだなってのもちょっと気になりました。
要するに、国内の電子書籍ストアが海外のストアに比べて著作権的な規範がだらしなくて、二次創作が金儲けをする温床になってるんじゃないかと思いました。

DLsiteみたいなストアがある限り「艦隊ジャーナルみたいな二次創作で俺も一儲けしよう!」というサークルは増え続けますし、そういうサークルが増えれば今の地図も今後容易に塗り変わると思います。
今儲かっているか否かより、そもそも儲ける手段がある限り、商品はそこに増えていくし市場も発生していくというのは、コミケがここまで肥大化した歴史を振り返れば理解できる通りです。
逆に、Kindleみたいな一次創作しか売れないストアがあるからこそ、そのレギュレーションに合わせてみんな一次創作をしようと考えることに繋がると思います。

この辺りはどうしても推測と予想の話になってしまうので、この辺でやめておきます。

「世界規模の二次創作活用例」について

世界で一番金のかかった二次創作ことMCUは、一種のフランチャイルズ形式で制作されています。ケヴィン・ファイギをはじめとした全体を管理するプロデューサーたちがバックアップすることで一定の品質を保ちつつ、原作とキャラクター性を生かせそうな役者と監督を有名無名問わず起用しつづけました。

確かにここちょっと反論が難しいですが、そもそも「キャラクターの設定やブランドイメージやを守りながら企業が集団で作ってるメディアミックス作品」と「個人がやってるブランドイメージや原作をどれだけ壊しても責任を問われない二次創作」では、全く養われる技術も要求されるスキルも違います。
それに、「トニー・スタークという人物をもともと知っている人にその前提を利用して作品を作る」という作業と、「トニー・スタークという人物がどういう人物か見せて魅力を伝える」という作業は全くプロセスが異なります。
前者はいわゆる二次創作ですが、後者はむしろ翻案に近いと思います。

それに僕自身、最近は小説家とは別のキャリアを積むためにシナリオライターの学校に通っていて、実際に漫画シナリオの仕事なんかも仕事として手がけています。
ただ、その仕事の中で「原作者の要求や守る必要のあるブランドイメージ、ポリティカルコレクトネスへの配慮や商業上の制約」といった様々な条件をクリアして、シナリオを構築していくのめちゃめちゃ大変でした。
そういう大変な仕事を自分が自信を持ってこなせたのも、今まで自分が一次創作として商業作家として自分の技術を鍛えてきたからだという自負があります。
「原作のイメージがどれだけ崩れても関係ない」「気分を害するやつは見なければいい」と無責任な態度で、原作の良いところだけを利用して横柄な態度を取っている彼らに、そんな技術が身についているとはとうてい自分には思えません。
一言で言うと「一緒にするな」です。
これは完全に、元商業作家として同人作家のことを見下してるだけですし、個人的な偏見ですので、賛同できるかどうかは読んでる皆さんの判断に任せます。

田中芳樹作品のガイドライン制定について」について

これについては全くのにわかだったので見当違いなこといってすみません。
ちゃんと勉強しておきます。
ちなみに銀河英雄伝説は古い方のOVAと最近やってたテレビシリーズを全部見ただけで原作エアプです。
重ねて申し訳ありません。

「 私の立場と姿勢について」について

一通り読ませていただきました。色んな姿勢の方が居るモノですね。
もちろん僕も、仲村さんのような作家が居てもいいと思いますし、居なくてもいいと思います。つまりどっちでもいいです。
自分には関係ない話ですし、人が好きにやってる分には問題ないですからね。

ただやはり、経済とか政治とかの話が絡んでくると、状況が変わってしまいます。
国内の市場や総生産、可処分所得、可処分時間はすべて有限です。何かのコンテンツが成長すれば、そのぶん所得や時間を奪われたコンテンツは衰退します。
そして山田太郎議員のように「二次創作を優遇しよう」という政策を唱える人間が現れれば、既得権益側は「一次創作を冷遇するのか」と声を上げざるを得ない状況に立たされます。

結局、お互い見ないふりをしてどうでもいいと思えてきた状況を、山田太郎議員のような人間が政治に持ち出したことで、どちらも無視できない状況になりつつあるんだと思います。
彼は二次創作やオタクを守ろうとするどころか、政争の場に担ぎ上げて火中に投げ込んだようなものですし、オタクはよくあいつのことちやほやしてんなって首をかしげてます。
国会で議論されるにしろ、法案を議員が作成するにしろ、そこには税金が投じられることになりますし、全ての国民はそれに無関心ではいられません。
そこにはもはや、オタクではない人間だからとか、クリエイターじゃないからといって無関係ではなくなっています。
全ての国民が二次創作の是非について、語るべき立場に立たされてしまっているんじゃないかと思います。
僕も「なんで経済とか政治とかややこしいこと考えてるんだろう」って自分でも疑問でしたが、結局これに端を発してる問題なんですね。

それに僕は放送でもお話しさせていただいたとおり、「セーラームーンのエロ画像なんて描いてんじゃねえよ!」とキレてるようなキモい男ですし、自分の作品に関しても同様の価値観を持って書いています。
この点に関してはお互い議論するまでもないなって思うので、この辺でやめておきます。