Funny-Creative BLOG

電子書籍作家の幾谷正が個人出版の最前線で戦う話

どこもかしこもお一人様にはつらい世の中

私事ですが東京へ引っ越してきて一人暮らし始めました。
なんとか生活落ち着いてきましたが、何かにつけて「世の中は一人で生きられるようにはできてないんだなあ」と感じてしまいます。
賞味期限の切れかかった食材を慌てて消費してるときとか特に。
人生はソロプレイ前提の難易度調整じゃないんですね。
とにかくそんな話題。

一人でやれることなんて高が知れている

繰り返し言ってることですが、一人で何でもできることがセルフパブリッシングの長所です。
ですが、決して一人で全てやるべきという意味ではないと思っています。
一人でなんでもできる人たちが集まって大きな事をする場だと考えています。

そういう意味で弥生肇さんの主催されている電子書籍同人レーベル「Hybrid Library」は、かなり上手い試みだと思ってます。

hybridlibrary.net

僕も便宜上、「FunnyCreative」というサークル(?)の体裁を取って活動していますが、思想は近い所にあるんじゃないかと勝手に思ってます。
今まで得たノウハウを活かして人の作品の書籍化を手伝えれば、これから始める作家さんの負担を大きく減らしてハードルを下げることができますし。
ただ、人の作品を責任持って管理する立場になってしまうと、自身の作品を書いている余裕がなくなってしまうという危険性を感じています。仕事もあるし。
(弥生さんも現状、実はこの問題に直面してるんじゃないかなあと傍目で見てて思ってる)

というわけで、現状はあくまで個人サークルとしてどこまでやれるかという路線を追求していくのが「FunnyCreative」のスタンスです。
なのでレーベルという単位ではなく、あくまで個人サークルの規模として、連携してやれることはないか3つほど案をまとめてみました。

ぶっちゃけ「こういうことやりたいけど誰か乗ってくれないかなあ」という大きめの独り言です。

1.作家クラスタの可視化

KDPでの活動始めてから、他の方の活動や作品が結構目に入ってくるようになりました。
とはいっても、活動されてる方のtwitterを見てると他の作家さんの活動が連鎖的に目に入ってくるというだけなんですけど。
同じように僕の作品で初めてKDP作品を手に取ったという方の中にも、それがきっかけで他のセルフパブリッシング作品の存在を知ったみたいなこともあるかと思います。
逆に言うと活動始めて取り組んでみるまで、どんな人が活動しているのか実態が不透明だったって部分も実はあるんですよね。
Amazonには「個人出版の作品だけをフィルタリングして検索」みたいな機能もないですし。

例えばセルフパブリッシングされてる方は大半こちらの『日本独立作家同盟』に加入していらっしゃると思います。
現時点(2015.09.27)で実に600人あまり、作家にとどまらず様々な立場の方がここに名を連ねられています。

www.allianceindependentauthors.jp

はい。ぶっちゃけ多すぎですね。
この中で誰がKDP作家で、誰が小説本を出していて~みたいな情報を探すインデックスとしては使いづらいと思います。
例えば同人イベントにカタログがあり、書店にジャンルごとの棚があるように、クラスタに属しているノードが一目でわかるようなインデックスが必要じゃないかなって思います。

hatenablog.com

とか考えてたら、ちょうど狙ったように良いタイミングでそんな感じのグループが出来てたのでこっそり参加してみました。
こういうグループに自主的に参加していくことが、クラスタとして連携していくための第一歩かも知れません。
「俺はあくまで一人でやりたい」って人は自己判断で参加しない手もありますし、そういった判断を自分でできるのもセルフパブリッシングだからこそ。

ただ、はてなブログやってない作家さんが漏れてしまうので、これをインデックスとして機能させるのは当面危険っぽいですね。
はてブロやってないやつにKDP作家を名乗る資格はねえ!」みたいな強者の理論をゴリ押ししていけば解決だけど、それはそれで危険思想。

2.作品プールの可視化

ddnavi.com

この衝撃的な記事を、他人事と思えず記憶に留めている同人作家さん結構多いんじゃないかと思ってます。
現状、セルフパブリッシングの界隈も同じように「書き手同士が互いの作品を読み合っている状況ではないか」という疑いは多くの方が持たれています。

ここの解決は才能とか運とかがかなり大きく絡んでしまうので、忍耐強く頑張ろうねって言うしかないんですが、回避するための手立てはあります。
作品のクオリティを高く保ち、お世辞でほめ合うようなぬるま湯環境を拒み、殴り合う覚悟で互いの作品をダメ出しすることです。

ちなみに僕自身、昔からずっと書き終わった作品はまず真っ先に正直な感想をくれる友人たちへ読んでもらうようにしています。
商業で活動始めてからも、担当編集へ送るより先に友人へ査読をお願いするぐらい頼り切ってました。
素直な感想をくれる友人というのはとても貴重で「こいつが駄目と言うなら絶対に駄目だ」と自分のクオリティを明示的にコントロールすることができます。

話はずれましたが、互いの作品を読み合って感想つけ合うような活動は当人にとって意義があること。
そして何より、作品の内容を見やすい形で広く紹介する場を増やせるので単純に強力だと思います。

ということを考えつつ界隈を見渡してみたところ、ちょうど同じような考えを提案している方がいらしたもよう。

denshochan.hateblo.jp

この中で言及されている書評企画という試みは自分も肯定的です(目的が全く別のところにあるけど)

3.イベントタスクの可視化

実は以前にもふらっとtwitterで呟いてたんですが、クラスタとして活動するならやはりイベントを開催したい。
ただ年中同じ値段、同じ状態で売りっぱなしの電子書籍にはイベントという概念が存在しません。

イベントの意義はなんといっても「この日にしか買えない作品がある」という限定状況そのものが人を呼び込む点です。
特に買う物がなくても、「せっかくだから覗いていこう」と立ち寄ってしまった経験あると思います。この引力こそがイベントの意義です。
しかもネットさえつながってればいつどこでも“ふらっと立ち寄れる”電子書籍は、イベントの意義が紙書籍よりかえって大きいかもしれません。

ただ「場所」の概念が存在しないのが電子書籍の利点であり欠点です。
「時間」と「状態」のみでイベントの体裁を作り出さなければいけません。

そう考えていくと、幸いにも電子書籍はセールや値段設定が管理者の裁量で自由に決められるという利点が存在します。
Kindleセレクトに登録していなくても一時的に値段を下げるという操作は手動でも可能)

要するに複数人で同じ日に「いっせーの」でセールを行うというのが電子書籍におけるイベントのイメージです。

漫画好きの後輩が、年中開いてる古本屋に全品100円セールの日にだけ毎回立ち寄ってる、という話を聞いて思い付きました。
僕もコンビニのおでんが70円セールしてると、つい買ってしまう小市民なので、気持ちは痛く分かります。

あと、これを提案した理由はもう一つあって。
前々から感じていたことなんですが、KDP作家はセールという強力な機能をあまり上手く使いこなせていないんじゃないか、という危機感からの考えでした。

そも忘れがちですが、紙の印刷物は値引きして打ってはならないと法律で定められています。
古書店でもない限りセールといったものが存在しません。しかし電子書籍ならば印刷物でなくなるため、セールが可能となります。
なので多くの作品を抱える出版社やレーベルは、それらの作品を同時に一斉値引きすることで人目を大きく引くという戦略を取っています。

対して個人作家は、多くても一人10作程度。それぞれが自分の選んだ日に、群発的にセールを設定することしかできません。
例え武器が同じでも、少勢というだけで見劣りします。武器が劣っていても、多勢になればそれだけで武器です。

「作家の露出を増やそう」「作品の露出を増やそう」というのは多くの方が提案されてますし、今さら言うまでもなかった感あります。
ただ三つ目の「市場そのものの露出を増やそう」って試みについては、誰も思い付いてなかった気配だったので、ドヤ顔で推進していきたい次第です。
言い出しっぺの法則だからお前が企画やれ、って言わないでお願い。